コンテンツへスキップ

カート

カートが空です

記事: GOTSの、その先へ。オーガニックコットンの母サリー・フォックスと探る、次世代に繋ぐ「本物」のものづくり

GOTS

GOTSの、その先へ。オーガニックコットンの母サリー・フォックスと探る、次世代に繋ぐ「本物」のものづくり

100年の歴史を誇る日本のニット工場:三恵メリヤスと、「オーガニックコットンの母」として世界的に知られるサリー・フォックス氏。二人の出会いは、ものづくりの未来を照らす、深く、そして温かい対話へと繋がりました。

※詳細解説
サリーさんは三恵メリヤスがEIJIシリーズで使っているアルティメイトピマをニューメキシコの農場から日本へ運ぶときにGOTS認証のフォワーダーとしても手伝っていただいており長くお世話になっています。

グローバルな認証基準である「GOTS」をどう捉え、その先にある「本物」の価値をいかにして伝えていくのか。素材への敬意、世代を超えて受け継がれる技術、そして作り手の誇り。二人の言葉から、これからの時代のものづくりが目指すべき姿を探ります。

きっかけは100周年。次世代のために取得したGOTS認証

 

三木:
今日はありがとうございます。私たちの工場は来年、おかげさまで創業100周年を迎えます 。この大きな節目を前に、若い世代に自分たちの仕事への誇りを繋いでいきたい、そして私たちの技術を世界基準で示したいという思いから、GOTS認証を取得することにしました 。ただ、ご存知の通り、日本の市場ではまだオーガニック製品が大きな選択肢になっていないのが現状です 。サリーさんがオーガニックコットンを始められた頃のアメリカも、同じような課題に直面していたのではないでしょうか 。どのようにして、その状況を乗り越えてこられたのですか?

サリー:
なんて伝えたらいいか、難しいのですが、私の考えをお伝えしますね。GOTSは、確かに一つの明確な基準を示してくれる良いシステムだと思います 。しかし、私が何よりも大切だと感じているのは、ものづくりに関わる「人」そのものです。巨大な工場もGOTS認証を取得していますが、あなたがたがやっていることとは全く違う 。あなたがたは、非常に繊細でクリエイティブなことをしています。紡績工場と共に、糸から服作りをデザインしている 。それは他のGOTS認証とは一線を画すものです。GOTSはあくまでベースであり、あなたがたが実践していることは、そのはるか先にあるのです 。


「オーガニックだから」ではない。品質こそが全てを語る


サリー:
あなたがたが本当に伝えるべきなのは、「オーガニックであること」以上に、その圧倒的な「品質」です 。昨日、あなたのTシャツを着ていましたが、本当に素晴らしく、美しかった 。その肌触りは、他のオーガニック製品とは全くの別物です 。あなたがたは、最高の素材を選び抜き、そこに卓越した技術を注ぎ込んでいる 。それこそが、何より特別な価値なのだと私は思います。

「まるでシルク」。世界一のコットンと、それを活かす日本の技術

三木:
ありがとうございます。私たちも全く同じことを感じています。「オーガニックコットン」と一括りにされがちですが、原綿の品質が全く違うんです 。私たちが使っている「アルティメイトピマ」は、非常にきめ細かく、柔らかさと自然な弾力性を兼ね備えています 。ギザや新疆綿、インド綿など、様々なオーガニック綿で試作を重ねた結果、たどり着いた最高の素材です 。だからこそ、自信を持って「世界一だ」と言えます 。

サリー:
(深くうなずきながら) そう、まるでシルクのようですね 。本当に美しい。一見シンプルに見えますが、背中の縫い目一つとっても、非常にエレガントです 。デザイン、縫製、その全てが特別です 。

「素材は裏切らない」—— 作り手の誇りが生む、ファストファッションの対極

サリー:
あなたがたの仕事は、ファストファッションのまさに正反対にありますね 。それは「アート」と「クラフト」の融合です 。美しい繊維は、作り手の「美しいものを作りたい」という根源的な欲求を呼び覚ます力を持っています 。何世代にもわたって受け継がれてきた芸術性と職人技、そしてインスピレーションを与える繊維。その全てが合わさって、他の誰にも真似のできないものが生まれるのです。

三木:
私たちは、素材の良さを消してしまわないよう、余計な仕上げ加工はしません。素材が持つ「ありのまま」の姿を大切にしています 。日本では古くから「良い素材は裏切らない」と言います 。最高の素材に対し、作り手として最高の仕事で応える。そうすれば、必ず最高のものが生まれると信じています 。

サリー:
私が若い頃、ガラスを吹いていたことがあります。私は最高の職人ではなかったわ。けれど、最高の素材を調合することに情熱を注ぎました 。私の役割は、私よりも優れた才能を持つ職人たちに、最高の素材を提供すること 。ものづくりとは、関わる全ての人が、次の工程を担う人のためにベストを尽くすリレーのようなものなのです 。



ー 認証制度の未来と、次世代へのメッセージ


三木:
(少し照れながら)でも、GOTS認証がなければ、ヨーロッパの国々からは信頼してもらえない現実もあります 。日本では「うちは児童労働なんてしていない」と言えば誰もが信じてくれますが、世界では通用しない 。そのジレンマはありますね。

サリー:
その気持ちは痛いほど分かります。認証制度は、時に私たちのような小規模で、しかし品質に誠実な作り手にとっては、あまりに煩雑で実態にそぐわないことがあります 。私自身、あまりの記録管理の煩雑さに、自分の農場の羊のオーガニック認証を諦めたところです 。

三木:
そうだったのですね。

サリー:
だから、負けないで。

三木:
はい、これからも、ものづくりつづけています。今日はお話が聞けて、本当に良かったです。ありがとうございました。

サリー:
こちらこそ、ありがとう。素晴らしい製品を作り続けてくれて。あなたがたの仕事は、宝物よ。また秋に農場でお会いしましょう。

 


GOTS認証
GOTS(Global Organic Textile Standard)は、オーガニック繊維製品の世界的な認証基準です。原料の95%以上がオーガニックであることに加え、化学物質の使用制限や環境・社会的責任への配慮が求められます。栽培から製造・流通までの全工程が厳しく管理され、信頼性の高いオーガニック製品であることを保証します。

EIJIは日本初、日本製のGOTS認証Tシャツを製作。